2025年11月26日
エコキュートの消費電力はどれくらい?電気代を抑える設定と節約術

エコキュートが最も電力を消費するのは、深夜の沸き上げ時、ヒートポンプが稼働している間(約1.5kW〜2.5kW)です。この消費電力は非常に高いですが、安い深夜電力時間帯に集中するため、日中の電気代はほとんどかかりません。最も重要なのは、この消費電力を「無駄なく使う」ことです。
消費電力を無駄にする最大の要因は、昼間の割高な電力を使う「沸き増し」や、冬場に自動で稼働する「凍結防止ヒーター」の存在です。エコキュートの仕組みを理解し、設定を最適化するだけで、消費電力を抑え、毎月の電気代をさらに節約できます。
例えば、深夜の沸き上げを「おまかせ」に設定している家庭でも、過去の使用量から予測が外れると過剰に沸き上げてしまい、無駄な電力を使っていることがあります。また、古い機種を使い続けていると、ヒートポンプの効率(COP)が低下し、同じ量のお湯を沸かすのに必要以上に電力を消費している場合があります。
この記事では、エコキュートの消費電力の具体的な内訳と、消費電力が無駄になる原因を解説します。最も効率の良い「おまかせ節約設定」の使い方から、最新機種への交換による節約効果まで、消費電力に関する全知識を得て、電気代の節約につなげましょう。
エコキュートの消費電力の基本と電気代への影響
エコキュートは、消費電力自体は高いものの、稼働時間帯の工夫により、非常に安価なランニングコストを実現しています。まずは、消費電力の基本を理解しましょう。
沸き上げ時のヒートポンプの消費電力(1.5kW〜2.5kW)
エコキュートの消費電力の大部分を占めるのが、お湯を沸かすために外気から熱を取り込むヒートポンプユニットの稼働電力です。
- 瞬間的な消費電力: 約1,500W(1.5kW)〜2,500W(2.5kW)程度が目安です。
- 特徴: これは一般家庭のエアコン(約600W〜1,500W)や電子レンジ(約1,000W〜1,500W)と比べても高い数値です。
しかし、この大きな消費電力を使うのは、電気代が最も安い深夜電力時間帯(例:23時〜翌7時)に限定されています。この時間帯は、日中の電力に比べて料金が約1/3〜1/4になるため、高い消費電力を効率よく使えていることになります。
深夜電力で稼働するため電気代は安い
エコキュートの月々の電気代は、タンク容量や地域によりますが、2,000円〜4,000円程度が一般的です。
- 深夜集中: たとえ瞬間的な消費電力が大きくても、単価が安い深夜に集中して稼働するため、ランニングコストは非常に安価です。
- (例:深夜の電気料金単価は約10円/kWhであるのに対し、日中は約30円/kWh以上です。)
- 日中の消費電力: 日中は、タンクの保温やリモコン操作、浴槽の保温など、消費電力の低い動作が中心となるため、電気代はほとんどかかりません。
消費電力が高い部品と低い部品
エコキュートを構成する各部品の中で、電力を大量に消費するものと、わずかしか消費しないものを知っておきましょう。
消費電力が高い:ヒートポンプ(圧縮機、ファン)
消費電力の9割以上を占めるのがヒートポンプユニットです。
- 圧縮機: わずかな電力で、取り込んだ熱を高温に圧縮するための心臓部です。ここが最も大きな電力を必要とします。
- ファンモーター: ヒートポンプに外気を取り込むためのファンを回すモーターです。
これらの部品は、特に冬場など外気温が低く、熱効率が落ちるほど、より多くの電力を消費して稼働しようとします。
消費電力が低い:待機電力、リモコン、保温機能
以下の部品は、ほぼ無視できる程度の消費電力です。
- 待機電力: 沸き上げを行っていない時間帯の、リモコンの表示や制御基盤を動かす電力。数W程度で、年間数百円程度の影響しかありません。
- リモコン: 表示パネルや操作のための電力で、わずかです。
- 浴槽の保温機能: 追い焚きではなく、ポンプでお湯を循環させて保温する場合、ポンプ自体の消費電力は非常に小さいです。ただし、長時間稼働させると無駄になります。
見落としがち!冬場の「隠れた消費電力」の正体
エコキュートのカタログに記載されている消費電力には含まれていない、または見落とされがちな電力が存在します。これが、特に冬場に電気代が跳ね上がる原因となることがあります。
隠れた最大の要因:凍結防止ヒーターの稼働
冬場、特に気温が氷点下になる地域では、配管や機器の内部が凍結しないように、自動で凍結防止ヒーターが稼働します。
- 消費電力: 機種や設置状況によりますが、ヒーター単体で数十W〜数百W程度の電力を消費します。
- 長時間稼働: このヒーターは、気温が低い間は深夜電力時間帯以外でも24時間自動で稼働し続けるため、月々の積算消費電力が無視できないレベルになります。
- 対策: 凍結防止ヒーターの消費電力を抑えるには、配管に防寒用の断熱材を追加で巻くなど、物理的な対策が有効です。
昼間の高額な電力を使う:補助ヒーターの稼働
一部の寒冷地仕様や特殊な機種には、ヒートポンプの能力だけではお湯が沸ききらない場合に、タンク内で水を直接温める電気ヒーター(補助ヒーター)が搭載されていることがあります。
- 消費電力: 数kWと非常に大きい電力を消費します。
- 高額な理由: 補助ヒーターは、深夜電力の時間帯だけでなく、昼間の割高な電力を使うこともあるため、これが稼働すると一気に電気代が跳ね上がります。
- 対策: 外気温が低い日でも、沸き上げ開始時刻を早めるなど、ヒートポンプの稼働時間を確保することで、補助ヒーターの出番を減らすことが重要です。
消費電力を抑える最も効果的な「設定」と運用方法
消費電力を抑えるには、大きな電力を消費するヒートポンプの「稼働時間」を、無駄なく最短にすることが最大のポイントです。
「おまかせ節約」で無駄な沸き上げを徹底カット
ほとんどのエコキュートに搭載されている「おまかせ」設定や「節約」モードを適切に使うことが重要です。
- 学習機能の活用: AIが過去のお湯の使用量を学習し、翌日に必要な量だけを深夜に沸かすように自動で調整します。満タンまで沸かすのを防ぐことで、無駄な電力消費をカットします。
- 調整: 家族の使用量が一時的に少ない場合(旅行など)は、手動で「沸き上げ休止」や「少量」モードに設定し、学習機能の誤作動を防ぎましょう。
昼間の「沸き増し」を避けるための手動調整
昼間に「湯切れしそう」と自動で判断されて沸き増しが始まると、深夜の3〜4倍も高い電気代を払うことになります。
- 最大の節約ポイント: 昼間の沸き増しを避けることが、消費電力による電気代節約の最大のポイントです。
- 方法: 予期せぬ来客などで急激にお湯を使いすぎた場合は、昼間電力時間帯に入る直前(例:朝7時前)に、手動で必要な分だけ沸き増し予約を入れ、高額な昼間料金での稼働を避けましょう。
- 給湯温度設定: タンク内の貯湯温度を高く保つ(90℃設定など)ことも、湯切れを防ぎ、昼間の沸き増しを減らすための間接的な対策になります。
頻繁な「追い焚き」や「足し湯」も消費電力増の原因
沸き上げ時のヒートポンプ稼働だけでなく、日中の「追い焚き(ふろ自動保温)」や「高温足し湯」も消費電力を増やす要因となります。
- 追い焚き(ふろ自動保温): 浴槽のお湯が冷めると、再び設定温度まで温め直すためにヒートポンプを稼働させたり、浴槽の水を循環させるポンプを長時間回したりします。これは日中の高い電気代を消費する原因となります。
- 高温足し湯: タンク内の高温のお湯をそのまま浴槽に追加するため、タンク内の貯湯量が急激に減少し、その後の昼間沸き増しを誘発しやすくなります。
対策: 浴槽のフタをしっかり閉める、家族が続けて入浴するなど、保温効率を高めることが、追い焚きの頻度を減らし、日中の消費電力を抑えることにつながります。
消費電力だけでは分からない!「COP」から見る効率
エコキュートの真の省エネ性能を判断するには、単なる「消費電力」の数値を見るだけでは不十分です。
COP(成績係数)の定義と省エネ性
COP(Coefficient of Performance:成績係数)とは、「消費した電力1に対し、何倍の熱エネルギーを生み出したか」を示す数値です。
COP = 得られた熱エネルギー/消費した電力
- 数値が高いほど優秀: エコキュートのCOPは通常3.0〜7.0程度です。つまり、1kWの電力で3kW〜7kWの熱を作っていることになります。
- 比較: COPが5.0の機器は、COPが4.0の機器よりも、同じ量のお湯を沸かすのに25%少ない電力で済むことになり、消費電力が抑えられます。
寒冷地仕様のエコキュートが高い効率を持つ理由
寒冷地仕様のエコキュートは、低い外気温でも熱を取り込めるように、ヒートポンプの性能が強化されています。
- 工夫: 低温環境下でもCOPを高く維持できるように設計されているため、結果的に、凍結防止ヒーターや補助ヒーターの稼働を減らし、トータルの消費電力を低く抑えることに成功しています。
最新機種と旧機種でどれだけ消費電力が変わるか
エコキュートは技術革新が早いため、古い機種を使い続けると、目に見えないところで消費電力がかさみ、電気代を損している可能性があります。
最新のエコキュートは旧機種より年間消費電力量が低い
メーカーは、機種ごとに年間給湯保温効率(APF)という指標を公開しています。これは、COPを年間通しての効率に置き換えた数値です。
- 省エネ性の向上: 10年前の機種と最新機種では、このAPFの数値が大きく向上しています。これは、同じお湯の量を使う場合でも、最新機種の方が年間で消費する電力量が少ないことを示します。
10年以上の機器は交換による節約メリットが大きい
使用年数が10年を超えたエコキュートは、ヒートポンプ内部の圧縮機の劣化などにより、COPが購入時よりも低下している可能性が高いです。
- 劣化による消費増: 圧縮機が劣化すると、設定温度のお湯を沸かすために、より長時間、より大きな電力を消費して稼働し続けなければならなくなります。
- 交換の検討: 10年以上使用しており、毎月の電気代が高くなったと感じる場合は、故障する前であっても、最新機種への交換による消費電力の削減効果が、交換費用を上回る可能性があります。
まとめ
エコキュートの消費電力は、深夜のヒートポンプ稼働時が最も高い(1.5kW〜2.5kW)ですが、安い深夜電力を使うため、電気代は安価です。
- 節約のポイント: 消費電力を無駄にしない最大の節約ポイントは、昼間の割高な電力を使う「沸き増し」や、冬場の「凍結防止ヒーター」の無駄な稼働を避けることです。
- 設定の最適化: 「おまかせ節約」機能を活用し、お湯の使いすぎに備える場合は、昼間電力時間帯に入る直前に手動で調整を行いましょう。また、追い焚きや足し湯の頻度にも注意しましょう。
- 効率の指標: 機器の省エネ性能は、瞬間的な消費電力ではなく、COP(成績係数)やAPFで判断しましょう。
この記事を参考に、ご家庭のエコキュートの設定を見直し、無駄な消費電力を抑えて、快適かつ経済的に使いこなしましょう。
































